近年の認知症について
※写真はイメージ写真であり、被写体は当院スタッフです。
周知の通り、我が国は超高齢化社会を迎え認知症の患者数は増加の一途をたどっています。それに伴って、老老介護や介護離職といった問題も生じており、認知症の方を社会全体でどのように支えていくかが非常に重大な懸念となっております。
また、高齢者においては、骨折や身体疾患等による入院を契機に認知症を発症あるいは症状が増悪し、自宅や施設での生活が困難となってしまうケースも多いようです。
こんな事でお困りではありませんか?
- 勝手に家を出て行って帰ってこない。
- 自宅にいるのに「家に帰りたい」と訴える。
- 家の中が整理整頓されておらず、直したものが何処のあるのかわからない。
- 誰かに何かを取られた、何かをされたと被害的な内容をしきりに訴える。
- いないはずの「虫がいる」など現実にはない事を訴えたり、一日の中で様子の違いがある。
- 以前に比べすぐに怒ったり、大声でどなったり、暴力行為が見られる。
- 夕方から夜間にかけてソワソワして落ち着かず、不眠の状態が続く。
- トイレ動作が上手くいかない等、日常生活に支障をきたす様な心配がある。
- トイレの場所や物品の場所など間違えたりよく忘れる事がある。
- 交通違反・事故等がみられるようになった。
認知症とは
認知症の症状は主に①中核症状と②周辺症状の2つに分けることができます。
中核症状とは、認知機能(記憶力・見当識・計算力・理解判断力など)の低下のことです。周辺症状はBPSD(行動・心理症状)・精神症状と呼ばれることもあります。
認知症の症状において、特に介護者が困難を感じるのは、周辺症状の方です。これには、易怒性・興奮・粗暴言動・介護抵抗・不潔行為・被害妄想・徘徊・不眠などが含まれます。このような症状を呈する方々は、施設においても介護が難しくなる場合があります。
認知症治療病棟とは
認知症治療病棟とは、上記の周辺症状のために自宅や施設での介護が困難となっている方々の入院治療を行うところです。生活機能回復訓練を中心とした生活全体を訓練として捉え、治療を行います。
【病棟入り口】
【談話コーナー】
【病室】
治療法について
治療は、A薬物療法 B非薬物療法 に分けることができます。
A:薬物療法
中核症状(認知機能低下)に対する薬物療法
数種類の抗認知症薬が広く使用されており、当院においても必要に応じて処方しています。しかしながら、効果は限定的で認知症の進行そのものを止めることは出来ないのが現状です。
周辺症状(BPSD、精神症状)に対する薬物療法
症状に応じて、向精神薬を使用します。特に、妄想・易怒性・粗暴行為・逸脱行為・せん妄等を和らげるために、少量の抗精神病薬(鎮静剤)・気分安定薬・抗不安薬を使うことがあります。副作用に十分注意しながら調整を行います。
抑うつ気分や食思低下に対しては、抗うつ薬を用いることがあります。
また、不眠の改善のために睡眠導入剤を処方することがありますが、せん妄を起こしやすいので注意が必要です。
その他、漢方薬を処方することもあります。
内服薬の整理
高齢者は、身体疾患のために多くの処方薬を服用している場合が多くなっています。大量処方のために倦怠が生じていることも少なくありません。内科医と協力しながら処方薬を整理し、体の負担を減らすことを心がけています。
B:非薬物療法
※写真はイメージ写真であり、被写体は当院スタッフです。
- 普段の接し方
- 環境調整
- レクレーションや作業療法
- 回想法
当院の認知症治療について
【カンファレンス風景】
※写真はイメージ写真であり、被写体は当院スタッフです。
当院の認知症治療は多職種の連携、情報の共有を密に行い、ご家族様も含めたチーム全体で入院時・退院・その後の生活について一緒になって考える事をとても大切にしております。
ご家族様にとっては入院患者様の状態の変化や今後の方向性など、不安な事が多いと思います。ご家族様、場合によっては退院先の関係者の方にもカンファレンスに参加して頂き、入院患者様も含めた全員が納得して人生を歩めるようサポートをしたいと考えます。
退院に向けて
以上の治療により周辺症状が軽快すれば、退院に向けて準備を進めていく事になります。ご自宅に帰る場合は、病棟ケースワーカーが、ヘルパーや訪問看護等の社会資源の導入のお手伝いを致します。周辺症状の問題が解決しても、認知機能低下のために自宅での生活が難しい場合は、施設入所に向けたお手伝いを致します。
退院後、自宅や施設で過ごしている中で周辺症状が再燃し、再び入院治療が必要となる事が有れば、可能な限り再入院を受け入れていますので、ご相談ください。